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ANAも行う「出向」という名目の人員整理は正しいのか?

2020.11.13

新型コロナの影響で経営悪化する企業が増えていますが、大手であるANAホールディングスもその影響を受けています。
そして、経営悪化を受けて人件費を圧縮するために外部企業への社員出向を募集していることが判明したのです。
こうした出向命令は、本当に正当なものであるのか注意をする必要があります。

出向を命じる企業が増加している?!

ANAホールディングスでは、過去最悪の赤字になる見通しによって構造改革の一環として出向を行うことを公表しています。
現時点で外部企業への社員出向は40人募集されていますが、来春までには複数の企業と調整することで400人以上に拡大する方針だと言います。
新型コロナの影響による経営悪化により、ANAホールディングスだけではなく他の企業でも出向を命じる企業は増加してきていると言われています。

出向の定義とは

そもそも出向とは、自身がもともと契約している雇用先企業との従業員の地位を保有した状態のまま出向先となる他の企業の指揮監督下で働くことを指します。
つまり、自分がもともと働いていた企業での労働契約自体は継続されることになります。
しかし、労働に関する指揮命令や出向先にあるため、出向すれば出向先と部分的な労働契約を関係になるということになります。

出向の要件

出向命令が有効であるためには、次の3つの要件を満たす必要があります。
まず1つ目は「労働契約上、出向命令権の根拠があり、その範囲内で出向命令が出されること」です。
つまり、出向に労働者の同意は不要ではあるものの出向先の労働条件や出向期間などが定められていなければ無効になり得ます。
2つ目は、「法令違反等がないこと」です。
組合活動の妨害や就業規則の条項に違反しているなどの場合には出向が無効になります。
そして3つ目は、「権利濫用ではないこと」です。
出向によって労働者に不利益が多い場合や出向の必要性がないような場合、また退職に追い込むような意図があるような場合には権利濫用と判断されます。

厳しい不況の中で、今後も出向命令を出すような企業が増えてくることが予想されます。
もし出向命令が出されたような場合は、不当である可能性もあるので出向要件を確認してみてください。
そして、不当である場合には一人で悩まずに、専門家である弁護士やユニオンへご相談ください。