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長時間労働の問題は従業員だけではなく経営陣側にもある

2021.03.26

長時間労働などの不当労働に悩まされているのは従業員だけではなく、取締役などの経営陣側の場合もあります。
経営陣側になれば会社を経営する側にまわりますが、そうなると労働基準法が適用されなくなるのです。
そのため、不当労働だけではなく何かあっても労災保険法も適用されません。
こうした経営陣側の労働に関する問題について解説していきます。

経営陣側にも起こる労働問題

長時間労働などの労働問題は従業員に起こるものだと考えられがちですが、経営陣側にも労働問題は生じるものです。
労働者の場合、労働基準法により労働時間は「1日8時間、週40時間長時間」と定められています。
この法定労働時間を超えて働く場合には企業と労働者間で36協定と呼ばれる時間外労働や休日労働に関する基準を定めた労使協定を結びます。
しかし、取締役など経営陣の場合、会社運営者にあたるため労働者のように労働基準法は適用されません。
そのため、長時間労働が強いられるような問題が多発しています。

名ばかり役員に要注意

最近では「名ばかり役員」と呼ばれる取締役が増え、労働者を肩書だけの取締役にすることで不当労働をさせるという問題が生じています。
2020年6月にもビルメンテナンス会社の名ばかり役員の男性が、長時間労働によって脳出血を発症し、労災認定を受けていたことが会見で明らかになりました。
この男性は1ヵ月で143時間という長時間労働をしており、取締役という肩書はあったものの役員報酬ではなく給与支給だったため労災が認定されたのです。

経営陣が労働者と認められる条件とは

一般的に、経営陣は会社を経営する側の立場であり、経営者としての業務執行権を持っています。
そして、賃金ではなく役員報酬を受け取っているため、労働者とは認められません。
一方で、労働者は使用者と従属関係のもとに労働を提供し、その対価として賃金を受けています。
経営陣であっても「名ばかり役員」であり、労働者であることを認めてもらうには業務内容と報酬が大きなポイントになってくると言えるでしょう。
名ばかり役員の場合は賃金支給であり、経営権は実質握っていないことが大半です。

経営陣としての肩書があることは仕事への責任感大きくなり、仕事量も増えてしまいがちです。
しかし、労働と見合っていないような扱いを受けていると感じている場合には弁護士に相談するようにしましょう。
経営陣であっても「名ばかり役員」であれば、労働者と同じ条件で働くことができます。