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JA阿蘇の職員が長時間労働で自殺、遺族が提訴

2021.05.21

JA阿蘇の男性職員が長時間労働を強いられて2019年に自殺をし、遺族がJA阿蘇などに対して損害賠償を求める裁判を起こしたことが話題になっています。
JA阿蘇の男性職員はどれくらいの残業が強いられていたのでしょうか?
長時間労働における自殺や、長時間労働の基準や管理について解説していきます。

JA阿蘇で起こった長時間労働による自殺問題

JA阿蘇で2010年から働いていた男性職員が、2019年に自殺しました。
この職員はヨーグルト工場の仕込み作業などを担当していましたが、スマホには「なんでこんな残業せないかんと?」と書き残して自殺をしています。
調べによると亡くなる前の半年間は月に69~113時間の残業をしていることが分かり、菊池労働基準監督署は男性の自殺を「業務災害」として労災認定しています。
そして、JA阿蘇が労働管理をしていれば自殺を防げたとして遺族が提訴を行っています。

残業の月平均80時間を超えると過労死ライン

時間外労働が一定を超えると、健康障害が生じる恐れがあります。
働きすぎにより病気や死亡、自殺に至るリスクが高まる時間外労働時間のことを「過労死ライン」と呼び、労災認定の基準として設けられています。
過労死ラインは、「発症前1ヵ月間に100時間」もしくは、「発症前2~6カ月間で平均80時間」を超える時間外労働を指します。
JA阿蘇の男性職員の場合、自殺する前6カ月の月平均の時間外労働が88時間であったため、過労死ラインとされる80時間を超えています。
そのため、自殺が過酷な時間外労働が原因であったとして労災認定されています。

会社には労働時間を管理する義務がある

そもそも、時間外労働を過労死ラインまで働くことを強いることは違法になります。
従業員を残業させるには、労働基準法36条に規定されている「残業させる場合には、労働組合等と協定を結ばなくてはならない」という内容に沿って「サブロク協定」という協定を結びます。
しかし、サブロク協定でも時間外労働の上限時間は設けられており、原則として1ヵ月間で45時間までです。
そのため、会社はこの協定の時間外労働時間を超えないように残業管理を行わなければなりません。

残業問題が起こらないように働き方改革なども施行されたものの、実際にはまだまだ従業員に長時間労働を強いる会社は存在します。
長時間労働は健康や精神に深刻な被害を与える可能性があるため、一人で抱え込むことは危険です。
もし長時間労働で悩んでいるような場合には、弁護士にご相談ください。